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名作文学いらっしゃいまし
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田原光泰『「春の小川」はなぜ消えたのか』(之潮フィールドスタディ文庫・2011.05)

 裏原宿とも呼ばれる「キャットストリート」はおしゃれな若い衆でにぎわう通り(らしい)です。
ちょっとクネクネしてヘンな道だと思っていたら、ココ、川だったらしいんですよ。
NHKの「ブラタモリ」で見たのですが、今も道路の下は水が大量に流れているんですって!
道路の下が地面じゃないって、何だか、ミステリーですよね!いったい、なぜ、そんなことに?

以下、ビーケーワンに投稿した書評です。


 春の小川は、さらさら行くよ♪ ―― 誰もが知っている唱歌「春の小川」。意外なことに、そのモデルは大繁華街・渋谷を流れる「渋谷川」の支流のひとつ「河骨川」だったという。
だが、今は跡形もない。「川」は消えた。いったい、なぜ?

 まわりの環境の激変により、数奇な運命をたどった都会の小さな川。
その知られざる歴史を、膨大な古地図、古写真、設計図面を駆使しまとめあげた労作だ。

 その昔、田んぼと畑の、のどかな里山だった渋谷。文字通り「谷」であるため、水が集まり大小多くの川が流れていたという。川は田畑を潤し、大名屋敷の庭園に利用されていた。
 長い時間続いてきた川と人の穏やかな営みは明治以降一変する。「急速」というより「豪速」で宅地化、都市化が進んだ。支流や小川は埋め立てられ、あるいはゴミ捨て場同様に放置された。本流も宅地や道路整備の都合で流れの向きを変えられる。「どぶ」とも「下水」とも区別がつかない姿に変貌してゆく川。
 トドメは昭和39年(1964年)の東京オリンピック開催だった。外国からのお客様の目に触れぬよう、次々と川に「フタ」がされた(=暗渠化)。川は風景から消え、人々の記憶から抜け落ちてゆく。
現在はごく短い区間が大雨対策で残されているにすぎないという。

 著者は自ら、ひとつひとつの川(跡)に足を運び、丹念なフィールドワークを重ねている。
「ああ、あれは川ではなく、どぶですよ」(62頁)
「ここは大雨が降ると、マンホールからすぐに水が道路にあふれるんですよ……」(87頁)
調査のため、昔語りに耳を傾けた時間も少なくなかっただろう。地元に生まれ育った著者の、川への真摯な姿勢、哀切の想いが伝わる。

 絵本の名作、バージニア・リー・バートン作・石井桃子訳『ちいさいおうち』を連想した。「ちいさいおうち」はラストで静かな田舎に移築されて穏やかな幸せが戻った。だが「春の小川」はもう二度と元には戻らない。
非常に畏れ多いことをしたのでは、と人間の業の深さを思わずにはいられない。

 関連エリアの詳細な折込地図つき。ちょっと違った視点の都心散策をしてみるのも楽しいだろう。

(2011.07.02 ビーケーワン投稿 898字)


3.11地震で、沿岸部以外でも液状化が起きたところがあったそうです。
調査してみたら、そこは沼が埋め立てられて造成された住宅地だったそう。
誰が悪いともいえない事例ですが、人間の都合で自然を作り変えると何らかのカタチで報いがあるのかな、と考えさせられました。

渋谷川周辺で、そんなことが起きないといいのですが……。




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導在 あわい

Author:導在 あわい
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