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名作文学いらっしゃいまし
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槐 一男『つっぱって したたかに生きた 樋口一葉』(教育史料出版会・2005.07)

『にごりえ』でショーゲキを受けて樋口一葉女史のことをもっと知りたくなりました。
見つけたのがこの本です。
キーワードは「つっぱり」と「したたか」って……ちょっと古い? 感じもしますが。
著者は「歴史教育」がご専門で、作家か文学系研究者が中心だった、これまでの一葉研究者の中では異色だ、とご自身が語ってらっしゃいます。

以下、ビーケーワンに投稿した書評です。


 夭折した薄幸の女性。けなげで清純な優等生タイプ。
これまで、わたしがいだいていた樋口一葉像だ。五千円札の肖像はこのイメージにぴったりくる。

 だが、表紙の女性は知らない顔。実はお札の写真は修正が入っているそうで、こちらが実像に近いという。勝気そうな凛々しい瞳がしっかり前を見据えている。早くもわたしの一葉像は崩れ始めた。

 著者は歴史教育が専門。残された膨大な文献と史料をもとに、推論や独断を排して事実をすくい上げて見せてくれる。

 一葉の生涯をたどるには、その日記に頼るところが大きい。だが、書簡や他の史料と突き合わせたとき、事実と異なる「脚色」が多いことに驚いた。人に見られることを意識していたようなのだ。

 当初の「小ぎれいな」イメージはどんどん崩れて、明治を懸命に生きた等身大の女性の姿があらわれる。
自分の才能をかたく信じ、自信家で負けず嫌い。たくましく行動的だ。
兄も父親も亡くなり、母親と妹との生活が肩にかかってきた十代後半からは、ややダークな一面もあったらしい。知り合いから借金を引き出すために策を弄し、作品を何とか世に出そうと、必死で人脈をつないだ。
 当時の若い女性の生き方としては異例だろう。気の毒なほどだが、そうした辛い経験ひとつひとつが一葉の血となり肉となり、名作の数々が生まれたのは皮肉である。

 残された作品の多くは、24歳で亡くなる直前の14カ月間に書かれた。この間、一葉宅には文学仲間が出入りしサロンのようであった、という。貧しく、寂しいだけの晩年ではなかった。すでに名声の一端は得ていた。それは救いである。

 『にごりえ』を読み、迫力の筆致で女の心の闇を描き出す背景を知りたくなり本書を手にした。知らなかった一葉の素顔を垣間見ることができ満足だ。あと少し深読みしたいと願う、オトナの読書人にはほどよい加減の一冊だろう。

(2011.07.10 ビーケーワン投稿 784字) 


知らなかった事実が満載で……驚きでした。
たった24年なのに、すごく濃い人生です。良くも悪くも行動的で立ち止まらない人なのです。

夭折が惜しまれる……と締めくくりたいところですが、少し戸惑いを感じています。
本書には省略されがちな一葉女史のダークサイドもきちんと書かれていました。
それで思ったのです、もし長生きしていたら、かえって作品も名前も残らなかった可能性もあるな、と。もちろん、個人的な想像ですが。
人としては間違いなく不幸な夭折、でも「文学にとって読者にとって(彼、彼女の)夭折は不幸なのか?」は永遠の命題です。




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導在 あわい

Author:導在 あわい
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