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名作文学いらっしゃいまし
日本の名作文学を楽しむブログです。                                                                                                                                    お江戸本と美術本のレビューも増殖中。
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国木田独歩『武蔵野』(岩波書店・2006.02・初出1898)

JR中央線下り電車に乗るときは、ちょっとワクワクします。
新宿駅を過ぎ、遠ざかる高層ビル群を見送って、しばし…。
ある瞬間、遮断されていた視界が一気に晴れます。
高架を走る電車からの眺めは一変。
見渡す限り、どこまでも一面の住宅地に…。二階家の一戸建てがびっしりです。
その風景は、凪いだ海のよう。
わかっていながら、いつも何だか嬉しくなる。
「ああ、ムサシノだ…」と感慨しみじみです。

目を閉じて、100年前、独歩が歩いたころの武蔵野を想像してみます。
この凪いだ海がすべて雑木林で、ぽつぽつと小島のように農家が点在していたのかなあ…。
目印になるような高台や建物は、何もありません。
まさに、迷宮に入り込んだような気分だったでしょう。

以下、ビーケーワンに投稿した書評です。


 東京都心を囲むように広がる武蔵野。緑豊かで閑静な住宅地が広がる、典型的な大都市近郊エリアだ。

 明治31年(1898年)独歩27歳のときの作品である。渋谷に住んでいた当時、近隣を取材して書かれたという。そのころの武蔵野はさらに広い。渋谷はもちろん、白金や目黒も、雑木林に埋もれた武蔵野エリア内だったというから驚く。

 日記とも随筆とも小説ともとれる、不思議な作品である。型にはまらず、自由なのだ。

 季節は晩秋、独歩に誘われるまま、武蔵野台地に足を踏み出してみよう。落ち葉を踏みしめる感触が心地よい。歩きながら、ツルゲーネフや二葉亭四迷を引用し、外来の新しい自然観や人間観を爽やかに語る独歩。よくわからないが、なんとなく、うなずいておこう。これまでの古い価値観を見直そうよ!君!という独歩の意気込みがじわじわと伝わってくる。常緑樹の松より落葉樹が趣があるよ、北海道より身近な武蔵野の自然がステキだよ、都会人よりは郊外で生きる農民に親しみを感じるなあ、という具合だ。

 明治の新青年に向けられたことばが、平成の疲れた現代人の心にも柔らかく響く。すがすがしさが広がる。高い空のどこかで鳥の鳴き声がかすかに聴こえた。今日は幸運だ。

 都会的な便利さと自然のなごみ感がほどよくミックスされている街っていいよね、独歩のこの感覚は卓見だ。
 「郊外の林地田圃に突入する処の、市街ともつかず宿駅ともつかず、一種の生活と一種の自然とを配合して一種の光景を呈しいる場処を描写することが、頗る自分の詩興を喚び起こすも妙ではないか。」(30-31頁)
アンケートで東京の住みたい街上位に必ずランクインする、吉祥寺や自由が丘の魅力そのものである。

 難しいことは考えずに、ヒーリング・ガイド・ムサシノとして楽しみたい一冊。本書片手に武蔵野散歩、道に迷ったら、どこかで独歩と巡り合えるかもしれない。

(2011.06.05 ビーケーワン投稿 793字)


皆の目が外国へ、新しいモノへ、機械化へ、と向いていたであろう時代。
足元の美を唱えていた、27歳の独歩の感性は本当に素晴らしいと感服します。

本当は親愛を込めて、独歩アニキと呼びたかった…。
フザケた書評と思われたくなくて、自粛してしまいました。

青年を啓蒙したくて仕方ない外国文学かぶれの独歩アニキ。ちょっと微笑ましい。
でも、さらりタッチで押付けがましくないんですよね。どこまでも弁舌爽やかです。
永遠の啓蒙アニキ独歩。

独歩アニキによると、時代によって武蔵野エリアは変化するらしい。
今の武蔵野ってどこでしょう?武蔵野市?武蔵〇〇駅のあるところ?
いずれにせよ、今の武蔵野では迷って可憐な乙女に道を尋ねることは、もうできないですね…。



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導在 あわい

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