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名作文学いらっしゃいまし
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楢山節考 (新潮文庫)楢山節考 (新潮文庫)
(1964/08/03)
深沢 七郎

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前回のブログ更新から、一カ月ちょっと。
また日があいてしまいました。
申し訳ありません。

でも今回は「せっかく再開したのに、ま~た、サボってる!なさけないねえ…」みたいな気分にはならずに済みました。
この間、ずっと、この作品のレビューを考えていましたので。
それだけ、ずっしりと重みがある作品です。

わたしも観たことがありますが、映画の方が知られていますね。
テレビ放送も何度かされているのでは?

考えてみると、このタイトル、ちょっと不思議ですよね。
なぜ『楢山節』とか『楢山まいり』ではなく、『楢山節考』なのでしょうか?

 TRCブックポータルに投稿したブックレビューです。


『楢山節考』は1956(昭和31)年に中央公論新人賞を受賞した、著者のデビュー作である。
選者だった伊藤整、三島由紀夫らをはじめ、当時の名だたる作家たちに絶賛されたということだ。

食料確保のために一定年齢に達した老人を捨てる、いわゆる「棄老伝説」「姥捨て」を題材にした作品だ。
年明けに70歳を迎える老女おりんは「楢山まいりに行く」(=捨てられる)日を目前にしている。母親思いの息子、辰平はその現実をなかなか受け入れられない。このふたりを中心に物語は進む。

テーマから、重苦しく陰湿な展開が想像されるが、物語は不思議なほど、からりと明るい。
棄老の詳細についてはもちろん、極度に食料が不足した村の事情、嫁入りや再婚、晩婚奨励の習俗などが、村に伝わる祭り唄である「楢山節」と、その替え歌によって語られるためであろう。著者は、どこまでも淡々と「楢山節考」を進める。

寒村の唯一の娯楽である歌の場面は、節回しの描写もひときわ念入りで、今にも歌声が聞こえてきそうである。
最終頁のあとに、著者の直筆らしい楽譜が掲載されていて「ギター、フラメンコ風に」(106頁)と添書きもされている。作家になる前はギター演奏に熱中し、日劇ミュージックホールにも出入りしていたという、型破りな著者らしいユニークさだ。

おりんはうっとりと「楢山まいり」のことばかりを考える。辰平の後妻が決まって、気がかりは何もなくなった。当日、家族や村人に振舞う御馳走や酒、山で座る筵も準備万端だ。丈夫な歯を嫌って、石を手に自ら歯を砕く。
「楢山まいりに行くときは辰平のしょう背板に乗って、歯も抜けたきれいな年寄りになって行きたかった」(48頁)

生への未練なく、死への恐怖もない。このような境地に至ることが可能だろうか。
おりんの姿に、清々しい感動を覚える。
「終活」や「エンディングノート」ということばをここ数年、聞くようになったが、まさにそれを先取りしている。
おりんの姿は、万人の憧れる「死のかたち」であろう。

辰平がひとり家に戻って来るラストシーンが心に残る。
大切な家族をひとり失うという大事件さえ、たやすく日常に飲み込まれて跡形もない。
このような貧しく厳しい現実は、かつて確かに日本に存在していた。

「死」の感触や匂いが日常から遠ざかった現代は「姥捨て」の時代より幸福なのか。
かつての貧しさは悪で、現代の豊かさは善なのか。「姥捨て」は過去の恥なのか。
今、「姥捨て」は本当になくなったと言い切れるのか。

本作を読むという幸運を得た者は、代償に今後、重い課題を考え続けなくてはならないだろう。
だが、死と向き合い、親しむことで、何かしら得るものがあると信じたい。

(2013.03.18投稿 1126字)



『楢山節考』が受賞した「中央公論新人賞」の選者に、辛口批評で知られた正宗白鳥氏も名を連ねていたそうです。
氏は本作に「人生永遠の書の一つとして心読した」と最高の賛辞をささげ、著者とも長く親交を保ったとのことです。
ふたりのちょっと不思議な関係については、本書に収録されている短編『白鳥の死』(著者は白鳥氏のことをスワンと呼んでいます)からも読み取れて、なかなか興味深い内容です。

深沢七郎という人は、かなり破天荒な人生を送った作家のよう。
機会があれば、そのあたりのことが描かれた作品も読んでみたいものです。


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導在 あわい

Author:導在 あわい
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