FC2ブログ

 

名作文学いらっしゃいまし
日本の名作文学を楽しむブログです。                                                                                                                                    お江戸本と美術本のレビューも増殖中。
http://willowsgreen.blog.fc2.com/

 


よみがえる天平文様よみがえる天平文様
(2012/12/10)
藤野 千代

商品詳細を見る


表紙を見たとたんに「うわあ~、なんてきれいっ」と声を上げてしまいました。
ウットリしつつ、次の瞬間「あれ?でも、こんな鮮やかで華やかな文様、正倉院御物にあったっけ?色落ちしたりサビたりして、ほとんど文様はわからなくなっちゃってるのばっかりのような…?」と疑問が。

この本に載っている文様はオリジナルなのか、そうではないのか?はたしてっ!?

TRCブックポータルに投稿したブックレビューです。


本書を手に取ると、まず表紙と裏表紙に広がる精緻で華やかな文様に目を奪われます。ですが、それは天平時代の文様そのものをそっくり再現したわけではありません。

約1300年を経た正倉院の宝物は、劣化し色があせ欠損しているものが多いため、「そのまま」では、文様そのものが持つ魅力を感じることは不可能なのです。
そこで、著者は、パソコンの画像処理ソフトを使って、ひとつひとつ文様を描き起こしました。「実物を忠実に再現したものもあれば、大幅にアレンジしたものもある」(7頁)という、斬新な試みがなされているのです。

例えるなら、ほんの一部が残っていた古い楽譜を想像力を駆使して一曲に復元し、今のリズムでアレンジを加え現代の楽器やコンピューター音声で演奏するようなことでしょうか。
本書で繰り広げられる文様の美の世界は、もちろん天平文様がベースではありますが、著者オリジナルの現代のアート作品であるとも言えます。清酒用パッケージをはじめ、食品、菓子、文具雑貨などにも採用されているそうです。

本書の構成は、正倉院の配置に従い、北倉、中倉、南倉に分類され、計185点もの文様デザインが収録されています。

北倉042平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいのはっかくきょう)第13号では、双鳥を取り巻く花弁文様の色調を赤と青の2バージョンで展開し、並べて載せるという大胆かつユニークな表現がなされています。それぞれ違った美しさがあり、天平文様の懐の深さに感じ入ります。

中倉067銅薫炉(どうのくんろ)の連珠文様と三花弁の連続文様は、まるでステンドグラスのようです。著者も指摘していますが、ハートにしか見えない文様があり、何とも不思議な印象です。

南倉185夾纈羅幡残欠(きょうけちらのばんざんけつ)では、ひしめき合っていた唐花紋の左右のフチを一部カットし配置を見直すことで「絵柄の本来性を補足している」(188頁)と、ときには「引き算」が効果的なこともあるようで興味深いです。

文様にじっと目を凝らしていると、ある瞬間、まるで3D映像のように立体的に浮かび上がって見えました。はっとして、他の文様も確認してみると、立体性を意識した奥行のあるデザインが多いことに気がつきました。

博物館に足を運び、本物を目にすることは、とても大切です。しかし、経年劣化した、肉眼で確認することも難しい文様を、ガラスケース越しに見たのでは、この気づきはなかったでしょう。

「古代の職人の想いを汲む」ことを常に心掛けている、と著者は述べています。
彼らは自分たちの目で見た鳥や花、草木そのものを、その立体的なかたちを文様にしたかったのではないか。平らな面に立体を表現することを諦めずに挑戦し続けたのではないか。
美しい文様の中に込められた人の想いが、鮮やかに立ち上がるのを感じることができました。

(2013.01.31投稿 1183字)


「曼荼羅」(胎蔵界の方)をじいっと見ていると、ある瞬間、3Dに浮かび上がって見えてきます。
真ん中の大日如来がぐーんと持ちあがって、頂点に位置するピラミッド型を真上から見ている感覚になります。
本書の文様で、それと同じ体験をしました。
的外れな思い違いかもしれないけど、古代の職人さんたちが立体を目指していたのだと思いたい!です。

不思議なのは、どれも鮮やかで緻密な文様なのに、見ていると安らかな穏やかな気持ちになれること。
著者も「あとがき」で、「なんとなく気持ちが落ち着き軽く、そして時にはたのしくなる」と述べています。
同感です!天平文様の持つパワーなのでしょうかね?

今度、奈良に行ったら、天平文様が採用されているというグッズを探してみようっと♪
って、いつのことでしょうね…?(行きたいよ~って、前にも叫んでませんでした?ワタシ…)

↓ブログのランキングに参加しています↓
 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ 
スポンサーサイト



 
 

Comment


非公開コメント

ただいま更新を休止しております。
ご用の方はこちらまでどうぞ。
お名前と件名を明記くださいますようお願いいたします。

名前:
メール:
件名:
本文:

09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

導在 あわい

Author:導在 あわい
ドーザイ アワイ と申します。
ワケあって時間がたっぷり。いつかは読みたいと願っていた名作の数々…いますぐ、読むことにしました!
名作以外もどしどし読む予定。
楽しい読書録を目指します。

日本の名作 (20)
古典 (3)
明治の名作 (5)
大正の名作 (3)
昭和の名作 (8)
平成の名作 (1)
一般書 (40)
美術 (10)
歴史 (19)
文章修業 (2)
名作のほとり (3)
そのほか (6)
文学の旅 (2)
博物館&美術館 (7)
栞を挟んだら*読書小話 (20)
日本の名作 リスト (0)
はじめまして (3)
未分類 (0)


TRCブックポータルに書評を投稿しています(2013.01~)。
ハンドルネームは*導在あわい*です。
「TRCブックポータル」は2016.03をもって運営終了されました。

******************************



また、2012.12までの書評は書籍と電子書籍のハイブリッド書店【honto】(旧;オンライン書店ビーケーワン)でも閲覧可能です。
当時のハンドルネームは*辰巳屋カルダモン*です。
     ******************************

tetu_bn_232.jpg
書評の鉄人*に選ばれました。
bk1-00232(2011.08.19付)
* 第297回 書評の鉄人列伝 で紹介されました(2011.09.30付)。

自分なりのルールを考えました。
こちらをご覧ください!


このブログをリンクに追加する

 
*Template By-MoMo.ka* Copyright © 2019 名作文学いらっしゃいまし, all rights reserved.