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名作文学いらっしゃいまし
日本の名作文学を楽しむブログです。                                                                                                                                    お江戸本と美術本のレビューも増殖中。
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近しい相手ほど許せないのはなぜか  角川SSC新書近しい相手ほど許せないのはなぜか 角川SSC新書
(2012/11/10)
榎本 博明

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この手の生き方指南書みたいな本は必要なところだけ拾い読みして済ますことが多いです。
ブックレビューを書くほど、きちんと読むことは、ほとんどないのですが、今回は挑戦してみました。

「許せない」「ありえない」ということばを、よく聞くようになったのはいつごろからでしょう?
よく考えると非常に排他的な強くて恐いことばなのですが、決まり文句のように気軽に使われるようになりました。
なぜ、「許せない」が現代の日本に、こんなに蔓延しているのでしょうか?

TRCブックポータルに投稿したブックレビューです。


自らの感情を制し、コントロールすることは難しい。
それがネガティブな感情ならば、なおさらだ。
他愛もないことに、なぜこんなに怒っているのか、自分でわかっていないこともままある。
あとで自己嫌悪に陥り、反省三昧の時間を過ごすのはツラい。

心理学者である著者は、いま世間に渦巻く「許せない」の声、あふれる怒りの感情の背景を丁寧にひもときつつ、「許し」の大切さを説き問題解決への道筋を示してくれる。

近しい関係にあるほど許せなくなるのは、互いに遠慮がなくなり、甘えが生じるためだ、との説明に思わずうなずいた。
「自分のことを理解してくれていれば、当然こうするはずなのに」
「自分はいつもこうしてあげているのに、なぜ…?」
こうして文章にしてみると、しみじみとわかる。その言い分は、自分勝手な都合のよい思い込みでしかないことが。問題は相手ではなく自分の心の中にあるのだ。
しかし「許せない」と憤っている、ただなかにいるときには、この明らかな事実を見失ってしまう。

どうしたらよいのだろうか?

著者は、自分の立場のみに凝り固まった考え方の偏りが「許せない」思いにつながるとし、「視点を変える」ことを提案する。「『べき思考』を自覚して改める」「怒りの感情を記述し整理する」「想像上の手紙を書くことで相手の立場を思いやる」等の方法は具体的でわかりやすい。自分に合った方法を選んで試してみることができるだろう。

だが、いざ、実行しようとすると、これはなかなかに苦しい。
自分の小ささ、弱さ、ずるさ、愚かさを、まず、受け入れることから始まるからだ。
「許せない」と人の非をあげつらい、相対的に優位に立つことで溜飲を下げる方がずっと楽なのである。
その先には平和な安らぎの世界が、人間的成長が待っていると知っていても、実行は簡単ではない。

日本人はもともと「許す文化」を持っている、と著者は繰り返し強調する。
「許す心」を新たにいちから構築するのではなく「回復」させればよいのだと。
かなたに希望の灯りが見えたようで、心強く思う。少しずつ歩みを進めるしかない。

折々、遠藤周作や三浦綾子など、多数の文学作品から的確な引用がされて理解を支えてくれる。
石川啄木の『一握の砂』から引用された次の句が心に残った。
「顔あかめ怒りしことが あくる日は さほどにもなきをさびしがるかな」(192頁)

(2013.02.12 991字)

 
はじめ、「ですます調」で書き始めたのですが難航し、いっこうに進まず…。
それで、久々に「だ、である調」で書いてみました。
こちらの方がフィットします!本の内容によって向き、不向きがあるのかな?
どちらかに決めなくちゃいけないわけでもないので、これからもフィットする方で書こうと思います。

この本、薄くて安価なわりに中身が詰まってます!良心的です。
重要なキーワードが盛りだくさんで、すべてを取り上げるわけにもいかず、レビューをまとめるのはちょっと大変でした。

レビュー本文にも書いたように、この本のレビューを書くことは、自身の醜い感情のありようを手もとに手繰り寄せ、目の当たりにすることになるので、かなりキツい作業ではありました。
レビューを書く、という目的がなければ、ここまでしなかったはずです。

書き上げた今は、ココロの中のもやもやがすっきり整理されたようで晴れ晴れとした気分です。
自分なりの「許し」システムを体得できた気がします。
実行するのは、少しずつ練習しながら、ということにはなりそうですが。

ブックレビューって、こういう効果もあるんですね!
自己実現というか、心の修養というか…。
ブックレビューの持つチカラを実感した、貴重な経験になりました。



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よみがえる天平文様よみがえる天平文様
(2012/12/10)
藤野 千代

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表紙を見たとたんに「うわあ~、なんてきれいっ」と声を上げてしまいました。
ウットリしつつ、次の瞬間「あれ?でも、こんな鮮やかで華やかな文様、正倉院御物にあったっけ?色落ちしたりサビたりして、ほとんど文様はわからなくなっちゃってるのばっかりのような…?」と疑問が。

この本に載っている文様はオリジナルなのか、そうではないのか?はたしてっ!?

TRCブックポータルに投稿したブックレビューです。


本書を手に取ると、まず表紙と裏表紙に広がる精緻で華やかな文様に目を奪われます。ですが、それは天平時代の文様そのものをそっくり再現したわけではありません。

約1300年を経た正倉院の宝物は、劣化し色があせ欠損しているものが多いため、「そのまま」では、文様そのものが持つ魅力を感じることは不可能なのです。
そこで、著者は、パソコンの画像処理ソフトを使って、ひとつひとつ文様を描き起こしました。「実物を忠実に再現したものもあれば、大幅にアレンジしたものもある」(7頁)という、斬新な試みがなされているのです。

例えるなら、ほんの一部が残っていた古い楽譜を想像力を駆使して一曲に復元し、今のリズムでアレンジを加え現代の楽器やコンピューター音声で演奏するようなことでしょうか。
本書で繰り広げられる文様の美の世界は、もちろん天平文様がベースではありますが、著者オリジナルの現代のアート作品であるとも言えます。清酒用パッケージをはじめ、食品、菓子、文具雑貨などにも採用されているそうです。

本書の構成は、正倉院の配置に従い、北倉、中倉、南倉に分類され、計185点もの文様デザインが収録されています。

北倉042平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいのはっかくきょう)第13号では、双鳥を取り巻く花弁文様の色調を赤と青の2バージョンで展開し、並べて載せるという大胆かつユニークな表現がなされています。それぞれ違った美しさがあり、天平文様の懐の深さに感じ入ります。

中倉067銅薫炉(どうのくんろ)の連珠文様と三花弁の連続文様は、まるでステンドグラスのようです。著者も指摘していますが、ハートにしか見えない文様があり、何とも不思議な印象です。

南倉185夾纈羅幡残欠(きょうけちらのばんざんけつ)では、ひしめき合っていた唐花紋の左右のフチを一部カットし配置を見直すことで「絵柄の本来性を補足している」(188頁)と、ときには「引き算」が効果的なこともあるようで興味深いです。

文様にじっと目を凝らしていると、ある瞬間、まるで3D映像のように立体的に浮かび上がって見えました。はっとして、他の文様も確認してみると、立体性を意識した奥行のあるデザインが多いことに気がつきました。

博物館に足を運び、本物を目にすることは、とても大切です。しかし、経年劣化した、肉眼で確認することも難しい文様を、ガラスケース越しに見たのでは、この気づきはなかったでしょう。

「古代の職人の想いを汲む」ことを常に心掛けている、と著者は述べています。
彼らは自分たちの目で見た鳥や花、草木そのものを、その立体的なかたちを文様にしたかったのではないか。平らな面に立体を表現することを諦めずに挑戦し続けたのではないか。
美しい文様の中に込められた人の想いが、鮮やかに立ち上がるのを感じることができました。

(2013.01.31投稿 1183字)


「曼荼羅」(胎蔵界の方)をじいっと見ていると、ある瞬間、3Dに浮かび上がって見えてきます。
真ん中の大日如来がぐーんと持ちあがって、頂点に位置するピラミッド型を真上から見ている感覚になります。
本書の文様で、それと同じ体験をしました。
的外れな思い違いかもしれないけど、古代の職人さんたちが立体を目指していたのだと思いたい!です。

不思議なのは、どれも鮮やかで緻密な文様なのに、見ていると安らかな穏やかな気持ちになれること。
著者も「あとがき」で、「なんとなく気持ちが落ち着き軽く、そして時にはたのしくなる」と述べています。
同感です!天平文様の持つパワーなのでしょうかね?

今度、奈良に行ったら、天平文様が採用されているというグッズを探してみようっと♪
って、いつのことでしょうね…?(行きたいよ~って、前にも叫んでませんでした?ワタシ…)

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導在 あわい

Author:導在 あわい
ドーザイ アワイ と申します。
ワケあって時間がたっぷり。いつかは読みたいと願っていた名作の数々…いますぐ、読むことにしました!
名作以外もどしどし読む予定。
楽しい読書録を目指します。

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TRCブックポータルに書評を投稿しています(2013.01~)。
ハンドルネームは*導在あわい*です。
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また、2012.12までの書評は書籍と電子書籍のハイブリッド書店【honto】(旧;オンライン書店ビーケーワン)でも閲覧可能です。
当時のハンドルネームは*辰巳屋カルダモン*です。
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書評の鉄人*に選ばれました。
bk1-00232(2011.08.19付)
* 第297回 書評の鉄人列伝 で紹介されました(2011.09.30付)。

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