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名作文学いらっしゃいまし
日本の名作文学を楽しむブログです。                                                                                                                                    お江戸本と美術本のレビューも増殖中。
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(白水社・2011.12)

アラ?江戸でも美術でも名作でもない書評が。どうしたの?ドーザイさん。

……この本は、カズオ・イシグロ『日の名残り』(早川書房・2001.05、初出1990.07)対策で手にしました。

カズオ・イシグロを初めて読んだのは昨年の早春。
映画化されたのをきっかけに『わたしを離さないで』(早川書房・2008.08、初出2006.04)を読みました。
こんなスゴイ作家がいるんだ!と張り手一発で土俵外に飛び出たようなショックでした。

昨年末には『日の名残り』も読み、深い感銘を受けましたが……今一つ、腑に落ちないところもあり。
書評を書く前に、イギリスの使用人について知っておく必要があるな、と思いまして。

以下、ビーケーワンに投稿した書評です。


 イギリスを舞台とする文学や映画にさりげなく登場する、執事やメイドたち。
物語のキーマンになることもあるが、彼や彼女についてはほとんど説明がなく、日本人には理解しにくい面がある。

 執事、ハウスキーパー、料理人、メイド、従僕、乳母、下男などなど……。
雇用される階級、序列、仕事の範囲、身なり、給与、主人との関係、退職後の人生等はいったいどうだったのか?
著者は、ジェイン・オースティン、チャールズ・ディケンズ、アガサ・クリスティなど、多くの文学作品を引用し、また映画のシーンや当時の風刺漫画も織り交ぜて、イギリスの伝統的な使用人のイメージと実態をわかりやすく解説してくれる。

 執事はもともとは飲み物に関するあらゆることを管理するソムリエのような職務だったという。
そのため、執事イコール「酒飲み」「酔っぱらい」という一種のステレオタイプが生まれたそうだ。
その後、執事の仕事の幅が広がり「個人的な感情はいっさい表わさず、よけいなことも言わず主人に忠実に仕え、仕事にも有能だが、つねに影の存在で自己主張をしない」(61頁)という日本でもお馴染みの典型的な執事像が出来上がって行く。

 ほかの使用人にも、このようなステレオタイプが必ず存在するという。
すべての家計管理を任され女性使用人の頂点に位置するハウスキーパーは「厳しいが根はやさしい。主人に極めて深い愛情を持っている」。
料理人はフランス人で「情緒不安定で感情的で気まぐれな芸術家」、若いメイドは「外で警官といちゃつく」、乳母は「他の使用人から嫌われる。使い古された言い回ししかできない」などなど。

 大きなお屋敷になると使用人の数も百人単位となり、管理にはルールが不可欠だった。
厳しい序列と上級の使用人が特権を手にする仕組みは、同じくイギリス伝統の「寄宿学校」と通じる、という著者の見解が興味深い。

 このような使用人の「典型」をふまえて、イギリス文学や映画にふれれば、また違った面白さがわかるかもしれない。
文学や映画のガイドとしても非常に優秀な本書、読みたい本がまたどっと増えた!

(ビーケーワン投稿 2012.01.26 878字)


昨年、友人と「カズオ・イシグロを読む会」を立ち上げたにもかかわらず、全然、活動が進んでいないのはわたしがサボっているからです。友よ、すまぬ!

最初は必要なところだけ拾い読みしようか、と思っていた、この本(ごめんなさい)。
読みだしたら、面白くて面白くて、一気に全部読んでしまいました。

「執事」の項目では『日の名残り』に直接、触れた記述もありますよ。的確な論評です。

19世紀から20世紀初めを舞台としたイギリスの映画やBBCのドラマ、好きなんです。
街並み、お庭、衣装がキレイで、見ていて楽しい♪
美しい田舎町で事件が起こり、ドロドロの人間模様が明らかに……っていうパターンもけっこう好きで。
使用人がらみの部分はナゾが多かったんですけど、これからは多少は理解できるかな~?

とにかく、カズオ・イシグロはオススメ!
誰かに本を勧めるのは、その人の趣味趣向もあり、難しいので、わたしはあまりしません。
ですが、カズオ・イシグロだけは別。どなたにも自信を持ってオススメできます!
きっと、そのうちノーベル文学賞を受ける……ハズ。
未読の方は、今のうちに読んでおくとヨイですよ~!




 
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槐 一男『つっぱって したたかに生きた 樋口一葉』(教育史料出版会・2005.07)

『にごりえ』でショーゲキを受けて樋口一葉女史のことをもっと知りたくなりました。
見つけたのがこの本です。
キーワードは「つっぱり」と「したたか」って……ちょっと古い? 感じもしますが。
著者は「歴史教育」がご専門で、作家か文学系研究者が中心だった、これまでの一葉研究者の中では異色だ、とご自身が語ってらっしゃいます。

以下、ビーケーワンに投稿した書評です。


 夭折した薄幸の女性。けなげで清純な優等生タイプ。
これまで、わたしがいだいていた樋口一葉像だ。五千円札の肖像はこのイメージにぴったりくる。

 だが、表紙の女性は知らない顔。実はお札の写真は修正が入っているそうで、こちらが実像に近いという。勝気そうな凛々しい瞳がしっかり前を見据えている。早くもわたしの一葉像は崩れ始めた。

 著者は歴史教育が専門。残された膨大な文献と史料をもとに、推論や独断を排して事実をすくい上げて見せてくれる。

 一葉の生涯をたどるには、その日記に頼るところが大きい。だが、書簡や他の史料と突き合わせたとき、事実と異なる「脚色」が多いことに驚いた。人に見られることを意識していたようなのだ。

 当初の「小ぎれいな」イメージはどんどん崩れて、明治を懸命に生きた等身大の女性の姿があらわれる。
自分の才能をかたく信じ、自信家で負けず嫌い。たくましく行動的だ。
兄も父親も亡くなり、母親と妹との生活が肩にかかってきた十代後半からは、ややダークな一面もあったらしい。知り合いから借金を引き出すために策を弄し、作品を何とか世に出そうと、必死で人脈をつないだ。
 当時の若い女性の生き方としては異例だろう。気の毒なほどだが、そうした辛い経験ひとつひとつが一葉の血となり肉となり、名作の数々が生まれたのは皮肉である。

 残された作品の多くは、24歳で亡くなる直前の14カ月間に書かれた。この間、一葉宅には文学仲間が出入りしサロンのようであった、という。貧しく、寂しいだけの晩年ではなかった。すでに名声の一端は得ていた。それは救いである。

 『にごりえ』を読み、迫力の筆致で女の心の闇を描き出す背景を知りたくなり本書を手にした。知らなかった一葉の素顔を垣間見ることができ満足だ。あと少し深読みしたいと願う、オトナの読書人にはほどよい加減の一冊だろう。

(2011.07.10 ビーケーワン投稿 784字) 


知らなかった事実が満載で……驚きでした。
たった24年なのに、すごく濃い人生です。良くも悪くも行動的で立ち止まらない人なのです。

夭折が惜しまれる……と締めくくりたいところですが、少し戸惑いを感じています。
本書には省略されがちな一葉女史のダークサイドもきちんと書かれていました。
それで思ったのです、もし長生きしていたら、かえって作品も名前も残らなかった可能性もあるな、と。もちろん、個人的な想像ですが。
人としては間違いなく不幸な夭折、でも「文学にとって読者にとって(彼、彼女の)夭折は不幸なのか?」は永遠の命題です。




 
伊藤氏貴『奇跡の教室』 ―エチ先生と『銀の匙』の子どもたち―(小学館・2010.12)

中勘助の名作『銀の匙』を読みました。噂に違わぬ名作です!
書評に取り掛かろうと思いましたが……どうも、まとまらず。
そして、妙に気になるのがこの本です。
『銀の匙』を検索すると、必ず一緒に出てくるこの本。
書評を考えるヒントになるかな?と読んでみました。
そして、感激冷めやらぬまま、先にこの本の書評を書いてしまいました。

以下、ビーケーワンに投稿した書評です。



 あふれる笑顔がまぶしい、表紙の写真。元教師の銀髪の老紳士と元気な少年たちの姿だ。
中学生、高校生だったころの自分を思う。ちくり、と胸が痛む。
成績は全般に低空飛行で、赤点で墜落もしばしば。ほかに特技もない。自信がなく、いつもうつむいて目立たないようにしていた。
そんな不出来な生徒にとって、教師は別世界の人だった。自ら積極的に教師に接した覚えはない。

 名作『銀の匙』に魅かれて、この本を手にした。この優れた小説について何かを知りたかった。中高一貫の超一流進学校の授業に、特に興味があったわけではない。

 その願いは、読み進むごとに果たされていく。
エチ先生こと橋本武氏は、授業で教科書を使わず、中学3年間かけて『銀の匙』を読み尽くす「スロウ・リーディング」を実践した。先生と、その特別な授業を受けた元生徒たち(卒業後は東大・京大に進み、各界で活躍)の証言で、当時の授業風景が再現される。それは素晴らしい授業で、わたしもひととき『銀の匙』の世界を体感し喜びをわかちあった。

 エチ先生と『銀の匙』の授業が大好きで、よい刺激をたくさん受けた生徒たち。教えを人生に活かし、成功を収めた。その方々に取材して、この本は成ったわけだが・・・・・・。
もと不出来な生徒のわたしは思うのだ。「進学校とはいえ、いろいろな生徒がいるはず。特殊な授業だけに反発した生徒もいたのでは?」と。思うと同時に諦めている。「教育書だもの、反抗的な生徒のことは載せないよね」と。この本の持つ価値はすでに充分に伝わっていて、ここで終わったとしても何の不思議もない。

 しかし「続き」があった。
昭和43年3月、高校の卒業文集にエチ先生が寄せた「編集後記」、その後半部分が引用されている(179-182頁)。
高校生のレベルを遥かに超えた名文がそろう中、文章の提出を拒否することで「自己表現」した生徒がいた。先生は「意義を認めることにしよう」と前置きしたうえで、彼にメッセージを贈った。原稿の大事な数ページを、反抗的な生徒へ捧げたのだ。優秀な生徒をたたえることもできたのに。それは決して見せかけではない、心からおもうひとのために紡ぎ出された、温かさに満ちたメッセージだった。

 そのメッセージはそのまま、わたしのもとへ届いた。
「ああ、先生は見ていてくれたのか、気にかけていてくれたのだ、そして今も見守ってくれている」

 遅れてきた生徒がひとり「奇跡の教室」に席を見つけた。わたしもエチ先生の生徒になった。
教室の扉は、今も開かれている。

(2011.06.19 ビーケーワン投稿 1058字)



こういう教育関係?の本はめったに読むことはありません。
『銀の匙』が結んでくれた縁に感謝です!

エチ先生は生前の中勘助と親交があり、やりとりした手紙がたくさん残されています。
後半生は世間から離れて、その実態はベールに包まれていた、という中勘助。
中の、実直で誠実な人柄がうかがえて興味深いです。

……やや冷静になってみると、この書評はかなり恥ずかしいですね。
感激冷めやらぬまま書くとこうなります。
しばらくおいて、別な目で見直すことが大事だと改めて思いました。反省。
締切があるわけじゃない、アマチュアなのだから、せっかくの利点を生かさなくてはね!




 

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導在 あわい

Author:導在 あわい
ドーザイ アワイ と申します。
ワケあって時間がたっぷり。いつかは読みたいと願っていた名作の数々…いますぐ、読むことにしました!
名作以外もどしどし読む予定。
楽しい読書録を目指します。

日本の名作 (20)
古典 (3)
明治の名作 (5)
大正の名作 (3)
昭和の名作 (8)
平成の名作 (1)
一般書 (40)
美術 (10)
歴史 (19)
文章修業 (2)
名作のほとり (3)
そのほか (6)
文学の旅 (2)
博物館&美術館 (7)
栞を挟んだら*読書小話 (20)
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TRCブックポータルに書評を投稿しています(2013.01~)。
ハンドルネームは*導在あわい*です。
「TRCブックポータル」は2016.03をもって運営終了されました。

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また、2012.12までの書評は書籍と電子書籍のハイブリッド書店【honto】(旧;オンライン書店ビーケーワン)でも閲覧可能です。
当時のハンドルネームは*辰巳屋カルダモン*です。
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書評の鉄人*に選ばれました。
bk1-00232(2011.08.19付)
* 第297回 書評の鉄人列伝 で紹介されました(2011.09.30付)。

自分なりのルールを考えました。
こちらをご覧ください!


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