例によって例のごとく、書評更新がまったく進んでおりませんことを、まずお詫びします・・・。
ああ、それなのに!「展覧会鑑賞記」を先に載せてしまうダメっぷりをお許しください。
会期が終わってしまうもので・・・。
「世界記憶遺産の炭坑絵師 山本作兵衛 展」
会場;東京タワー1階特設会場
会期;2013年3月16日(土)~5月6日(月・振休)
時間;10:00~18:00
主催;東京タワー、読売新聞社昨年、世界記憶遺産に日本で初めて登録されて、一躍「ときのひと」となった山本作兵衛さん。
「作兵衛さん大ブーム」が起きてから
(わたしの中で)、関東での展覧会を心待ちにしておりました。
個人的な予想では、今年の秋あたりに上野の都美か両国の江戸博?だったのですが、いずれもハズレ。
展覧会のスケジュールは、だいぶ前に決まっているようですから、大きな会場で急にはムリか~。開催時期優先で決まったのでしょうかね?
それにしても「東京タワー特設会場」なる不思議な場所。
しかも「東京タワー開業55周年記念」という冠がついているのもナゾです。
展覧会に先だって2月に開催されたシンポジウムは、東博の講堂というアカデミックな立地でしたのに。
(ご報告が遅れましたが、作兵衛ファンのわたし、このシンポジウムにも、ちゃっかり参加)
会場には、彩色原画59点のほか、作兵衛さんの愛用品の展示、筑豊以外の炭坑の紹介等がありました。
炭坑節が流れていたり、会場が炭坑の入口を模した作りになっていたり、工夫されています。
原画は「個人蔵」が圧倒的に多いです。
一升瓶持って行くと描いてくれた、という逸話もあるとかないとか?
画面の大きさもまちまちで「これは、お菓子の箱の裏か何かですか?」なんていうのも、ありました。
同じテーマ(構図も説明文もほぼ同じ)で描いた作品が何点もあるのが作兵衛さんの特徴ですが、揃って並んでいるのを見ると、違いが際立って興味深いですね。
初期の作品の方が、圧倒的に絵に力があります。
孫たちに当時の炭坑の様子を伝えたい、という気持ちで炭坑画を描き始めた作兵衛さん。
やっぱり初期の方が、伝えたい気持ちがあふれ、そのまま絵に投影されているようです。
しかし、キャプションがタイトルと制作年だけって・・・。
あっさりしすぎでしょうよ~。
まあ、画中の説明文を読めばわかるんですけどね。
ご来場のみなさま、説明文をしっかり読んでらっしゃるようで、一作品あたりの滞在時間が他の展覧会より長いように思いました。
作兵衛さんの絵で、わたしがもっとも魅かれるところは、ディテールへのこだわりです。
原画に触れると、さらにそれがよくわかります。
わたくしイチオシの「蓬莱豆売り」の衣装の縞柄の細かさといったら!
画集だとそこまでわからないのですが、丁寧に4色塗り重ねてありました。す、すごい!
作兵衛さんのディテールへのこだわり、それは朽ち果てて消えていくものへのやさしいまなざし、愛情表現であると、改めて強く感じました!
しかし、今回の展示は、作品の「記録」部分にばかり注目していて、絵画的価値については、まったく言及されていません。そこが何とも残念です・・・。難しいところではあるんですけどね。
作兵衛さんの作品を画学生が模写した大画面の壁画4作品はよかったです。
4作品の配置もよくて、いいアクセントになっていました。
上の方とか、よく見えませんでしたが~。
若き日の、南伸坊さんも描いてらっしゃいます(サインがありました)。
第二会場では、なぜか、東京タワー開業当時の街や家の中を再現した「三丁目の夕日」的な展示が。
作兵衛さんが炭坑画を描いたのがそのころだった、というムリヤリなつなげ方です。
描いたのはそのころでも、描いている内容は明治~大正、昭和初期の炭坑の様子なのですが・・・?
でも、シニアのみなさまが懐かしい~と楽しそうにはしゃいでらしたので、まあ、いいか。
4/27読売新聞夕刊「こども欄」に子供記者が取材した本展覧会の記事が載っていました。
それはたいへんよいのですが、ひとつ、気になる点が。
「バラスラ」の進行方向についてです。
「バラスラ」とは、傾斜した坑内ではしごを
下り、かごに入った大量の石炭を人力で運ぶ重労働の様子(しかも女性がひとりで!)を描いた場面です。
逆ではないか?と読み取れるような記事の書き方になっていました。
(きっと、作兵衛ファンのどなたかがすぐに気付いて連絡していると思います)
この、『「バラスラ」はどっちに進んでいるのか?』は作兵衛ファンの間では有名なトリビアです(?)。
当たり前すぎて思い浮かばなかったのでしょうか、作兵衛さんの画中の説明にも「昇っている」とも「下りている」とも書いてありません。
正解は「下りている」です。
さすがに100㎏以上入ったかごを引き上げるのはムリ。
わたしも、先のシンポジウムで、初めて知った次第です。
「書くまでもない、当たり前だった」ことが、もう今のわれわれには、すっかりわからなくなっている、という現実を改めて突き付けられた気がします。
こういうところから始めて、失われる記憶を記録していかなくてはならない、「世界記憶遺産」とは大変な作業なんですね。
ところで、わたし、作兵衛さんの画集を昨年末、トラノコはたいて買いました。
しょっちゅう眺めて喜んでいますが、やはり今回、原画に触れることができたのは、大きな意味がありました!
これからも、こうした機会があるとよいなあ♪と期待したいのですが、そうもいかないようで。
実は、作兵衛さんの作品は保存状況が、たいへん不安視されているのです。
ええっ?なぜっ?たかだか50年くらい前のものでしょ?新しいのに?
それは、先のシンポジウムの内容にかかわることになりますので、また別の機会に記事にしたいと思います。
(いつになることか・・・?)
作兵衛さん展、東京での原画公開はこれが最初で最後かもしれません。
ぜひ、お見逃しなく!
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